ラーニングプログラム 特定のプロデュースのために必要な知識を、その習得方法の手順と書籍を中心とした関連情報を組み合わせることによって自ら学べるプログラムとして整理しています。 ラーニングプログラムについて

ブランデッドコンテンツ制作プロセス
ブランデッドコンテンツ構築プログラム

本プログラムは、ブランデッドコンテンツを作りたいと考えている企業のほか、地域の団体及び映像制作会社の方々に向けて構築しています。ブランデッドコンテンツの制作に取り組むことのメリットは、人材獲得や売上増加という最終目的の達成だけではありません。一般的な会社案内のように文字や図表だけで説明するのではなく、いざ映像で表現しようとすることで、その制作過程において、何を伝えていくべきなのか、そして経営はどうあるべきなのかを考えるよい機会となります。
ブランデッドコンテンツの制作においては多様な方法論があると思いますが、ここではブランデッドコンテンツとは何かという一般的定義を行なうものではありません。最終的に望む結果をもたらすためには、単に映像制作の技法だけでなく、企業分析、マーケティング、ブランディング、コミュニケーションプランニング、ソーシャルメディア運営、ストーリーテリング、効果測定と様々な分野の知識や経験が必要となります。しかしながら、これらを完全にマスターすることはなかなか容易ではありません。
そこで、本プログラムでは、全体を統括するプロデューサーを念頭におき、ブランデッドコンテンツ全体の概要を表すとともに、さらに踏み込んで知識を得たい方のために、市販されている一般書籍の中から、概要を理解するためにわかりやすいもの、実践的に役に立つものを中心にピックアップしてご紹介しています。

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企業分析

ブランデッドコンテンツを制作したいと考える企業にとって、コンテンツを自社内で制作する場合でも外部の制作会社等に発注する場合でも、過去から現在に至るまでの自社がどのような状態であるかを把握しておくことが必要となります。そして、これらを整理するためには、各種ビジネスフレームワークを用いると便利です。


ただし、ブランデッドコンテンツの制作において、フレームワークを使えば自然と答えが出てくるものではなく、どのフレームワークを活用すべきかについても絶対的なものはないため、企業を取り巻く外部環境や内部要因によって使い分けることになります。


既存のフレームワークを用いることのもうひとつのメリットとしては、その使い方などについて解説された書籍等が多くあり、制作会社等関係者との間で、共通の認識を持ちやすいということが挙げられます。

ブランド定義

事実関係が整理できたら、次に企業がこれから何を達成したいのかに進みます。これは経営トップが決めることもあれば、従業員やメンバー全体でボトムアップ的に決めていくこともあるかと思います。いわゆる企業理念や事業計画にあたるところですが、経営戦略の立案に関しては数多くの書籍が出ているため、わかりやすいものを手にとってみることをお勧めします。


ここでは、細かな数字よりもミッション・ビジョン・バリューに代表される未来に向けた大きな方向性を表すことが、制作者とコミュニケーションを行ううえで最も重要です。そして、このミッション・ビジョン・バリューが、生活者に対するブランディングの要、ブランドプロミスの設定に結び付くことになります。ミッション等が社内などの意志を中心とした整理だとすると、ブランドプロミスとは文字通り生活者に対して何を約束するか、さらに踏み込んで言うと、生活者が当該企業に何を期待するかということを指していることになります。このことは、ブランディングを考えるうえでとても重要な概念です。


また、この段階で、あとの工程で出てくる映像の種類や取り組むべき戦略が決まります。映像の種類や取り組むべき戦略は大きく3つに分けることができます。まず、事実を知ってほしいという想いが中心になる場合は、インパクトの高い映像を作る、数多くのCMを打つ、チラシをたくさん配るといった方向性となり、基本的な戦略はプロモーション的な考えとなります。他の事業者の製品やサービスとの差別化を図りたい場合には、機能的価値の訴求が中心となります。したがって、機能的にどのように優れているか、どのように役に立つかなど、ロジカルな要素が中心となります。そして3つ目が、ブランディングの中で語られる情緒的価値を訴求しようとする場合です。これは、作り手の想いであったり歴史であったり、生活者の心にある同様な意識が共振することによる情動を呼び起こすもので、狭義のブランデッドコンテンツはこの分野にあたります。


このように、会社がいま抱えている課題は何か、そしてそれをどのように解決したいかによって、大きな意味で動画の方向性は決定されると言えます。

KPI設定

KPI (重要成果指標) を何にするかという際に、売上高の増加という話が経営サイドからよく出てきますが、これは実際にはKGI (最終目標達成指標) のことを指しています。KGIとKPIは、KPIツリー構造で説明されるように最終指標と中間指標の関係です。映像を活用すれば、急に売上が増えるというものではなく、価格設定や機能の向上などが総合的に影響するものであり、ブランデッドコンテンツによる効果は様々な要素のひとつにしか過ぎません。


また、効果測定を行うには、映像と人間の関係について把握しておくことが重要です。学問的には脳科学的な見地と行動経済学の視点が役に立つ。脳科学的な見地でいえば、fMRIという生きた脳を直接測定する方法により反応を見るという方法がありますが、これを一般の効果測定に用いるわけにはいかないため、定量的な評価方法と定性的な評価方法により間接的に測定することになります。ただし、視聴者の情動がどのように変化したかという点については、単なるアンケートへの記述だけではその本心を見誤ることもあるので注意が必要です。なお、行動経済学的な視点から、人間が論理的ではない判断をすることなどを知っておくことは、KPIの設定だけでなく、どのようなストーリーをコンテンツの軸にするのかというアイデアのヒントにもなるでしょう。


ちなみに、映像コンテンツの種類による有効期間を考えた場合、短期的なプロモーションは3カ月未満、中期的に差別化を中心とした機能的価値の訴求は1年未満、そしてブランディングの本質的効果に近いブランデッドコンテンツの効果は概ね1年以上3年以下と考えておくとよいかと思われます。

予算設定

この段階で、ブランデッドコンテンツ制作における全体の予算設定をしておくことが必要となります。このあたりから、制作会社だけでなく外部のパートナーと一緒にディスカッションしていくことが増えていくからです。社内の人員確保と工数想定とともに、映像制作費、外部専門家に依頼する予算、そして必要な場合はネット広告費等の計上も行っておきましょう。クリエイティブなアイデアは際限なく広がっていくこともありますが、最後に予算がないということが明らかになると、その後のチーム編成に悪影響を及ぼすことにもなりかねません。

ターゲットのペルソナ設定

映像コンテンツの目的が短期から中期、中期から長期となるにつれてターゲットの焦点も広がっていきます。短期的な目標は焦点が狭く、長期的な目標は焦点が広がるという傾向があります。


ブランデッドコンテンツは長期的な目標となりますが、やはり企業としてはある程度の期間で目的を達成したくなるものです。D2Cの推進や人材採用ということになると、概ね1年程度というのが判断のポイントになってくるかと思われます。


そのうえで、狙った効果を得るための焦点を絞るためには、誰がその目的を達成してくれるのかという要素を洗い出す必要があります。これが「ペルソナ」の設定です。具体的に何らかのメッセージを届けたい相手、アクションを起こしてもらいたい相手の仮想イメージを具体的に書き出す作業となります。

関連資料

タッチポイント把握

ペルソナの設定ができれば、その中からその人物が外部情報と触れる接点を洗い出していきます。その際に、映像メディアに限らず、紙媒体、Web、直接的な人間関係などすべてを考える必要があり、そこから映像メディアにつなげるためのすべてのプロセスの可能性を整理していきます。


なお、QRコード、Webサイトアドレス、検索キーワード等を記載したチラシやショップカードのようなアナログ的なツールの設計は見過ごされがちですが、設計上有効に働くことも多く見られます。

メディアに合わせた映像の外形

現在日本で使われているインターネット上の映像メディアは5つほどに集約されています。これらは映像配信メディアであると同時に、ソーシャルメディアという特性を持っています。つまり映像の格納場所、配信場所という要素とともに、人に紹介するという要素とコメントするという要素が組み合わさってくるわけです。


そしてメディアが特定されると、画角や映像尺といった映像コンテンツの外形が決まります。主たる再生メディア、解像度、画角、中心となる映像尺など、メディア特性を意識した設定が自動的に絞り込まれることとなります。

演出手法

最終的なメディアの設定が決まったところで、当初のブランド定義と組み合わせてどのような演出で進めるのかを決定します。インパクトのある映像表現、エピソードを軸としたドキュメンタリー方式による表現、想いを具現化した創作ストーリーによるフィクションとしての表現などが考えられますが、このあたりは適正のある制作会社を絞り込んだうえで、アイデアを委ねることになるでしょう。絵コンテ等の制作はそれだけでもかなりの工数が必要となるため、まずは、数枚程度の構成案を軸に制作会社を選定することが必要となります。

効果測定

最後はPDCAサイクルの後半として、映像に対する反応、広告の効果などについて、インタビューなどによる定性的調査と広告出稿の効果によるものを取りまとめたうえで、次の発信に活かしていくことになります。広告出稿の効果についてはこまめにチェックし、有効なターゲットを徐々に絞り込んでいくことが必要です。また、連続ものの映像コンテンツの場合には、測定結果を踏まえて、2回目以降に取り上げるテーマの調整を図っていくことも考えられます。