映像制作会社の方々からは、企業等と直接やりとりしながら映像制作をしていくことは、新たな発注ルートの確保、企画に関する初期段階からの関与、無駄のない制作費など、様々な面から興味・関心があるということをお聞きします。ブランデッドコンテンツの定義には様々な意見があるかと思いますが、ここでは企業の資金を活用しながら、単独の作品としても成立し、生活者の関心を満たすものと少し広めに位置づけてみます。
ブランデッドコンテンツには3つの側面があります。ひとつは、企業等のブランディングニーズを満たすために、企業から資金提供を受けて制作する映像コンテンツという経済的側面、もうひとつは、企業から制作資金を得た映像作品という性格を持ちながら、クリエイティブ単独で見ても成立している作品であるという芸術的側面です。そして3つ目として、企業や団体と接する「新たな取引市場」という側面も持っています。
これまで、映像に対する企業の関心の中心はテレビCMでした。しかしその手法を取り入れられるのは大企業に限られていたと言えます。それがネット配信技術の一般化によって、中小企業にも映像の活用機会が拡大してきました。また、映像制作技術の進化や低価格化に伴い、ハード、ソフトの両面で、例えアマチュアであっても映像制作から配信まで自ら取り組むことが可能になりました。簡易的なものであれば、制作から配信まで一貫して行えるようになってきたのは、YouTuberの躍進に見る通りです。その一方で、すべての企業が制作から配信に至るまでを内製する方向に一気に舵を切るかというと、まだまだこれからだと思われます。プロフェッショナルが持つ技術やノウハウは、やはりアマチュアとは一線を画すものがあり、企業の制作パートナーとしての役割が期待されているように感じます。
一般企業にとって、映像制作の発注段階においてぼんやりしたイメージはあっても、明確な指示が出せるかというと難しいところがあります。ブランディングの本質や映像制作技術について、完全に把握している人材が社内にいるとは限らないからです。これまでの制作スタイルのように、代理店や放送局のプロデューサーとのコミュニケーションと同じようにクライアントと接していると、話が二転三転して現場が混乱することも少なくありません。単なる発注者と受注者という関係としてとらえるのではなく、企業側の目的を達成するためのパートナーとして、一歩踏み込んだ提案や議論を通じて制作を進めていくことが肝要です。
一般企業の経営者から必ず出てくる言葉が、「いただいた映像企画がよいのはわかったが、それをどのように活用していけばいいのかを提案してほしい」というものです。これまでの制作会社は、どのメディアで用いられるかが決まっているという前提で、絵コンテや演出を提案すればよかったのかもしれませんが、ブランデッドコンテンツにおいては、どのメディアを用いるので、どういった人々にアプローチできて、どういう情動の変化が起きるかというところを説明する必要があります。この分野においてプレゼンをすることが難しい場合には、メディア戦略を得意とするパートナーと協業することもひとつの方策です。
映像制作者にとって、ブランデッドコンテンツの制作における一番なじみの薄い分野が、ブランディングに関することと映像の視聴効果の測定という部分かと思います。
まずブランディングに関しては、中小企業側においても、どのように進めていけばよいかという知識が十分ではありません。映像の内容打ち合わせの前に、この段階の整理ができないために映像制作のプランニングまで話が進まずに停滞するということが多々あります。
また、効果測定についても難しいところです。ネット広告のように、単純に何人が見たかということが指標になるのであれば、視聴者数を計測することは簡単ですし、強制広告などの仕組みを活用すればその数値を向上させることもできます。しかしながら、実際の効果は生活者の頭の中でどのような変化が起こっているかということであり、それを測定するためには定量、定性の両面からアプローチする必要があります。
専門性の高いブランディングと効果測定の手法については、その分野の専門家とパートナーシップを組むことが良策だと思います。
現在、経済産業省によって、ブランデッドコンテンツ制作に関する補助金の整備が行われており、映像産業振興機構 (VIPO) より公募が開始されております。補助金申請にあたって、専門家の紹介、ブランディングや効果測定に関するアドバイスなどが必要な方は、以下のフォームよりお問い合わせください。