国際共同制作においては、プロデューサーが製作全体の契約関係を理解しておくことが重要となります。特に企画開発段階において、原作者や脚本家との間で適切な権利処理を行うことにより、完成したコンテンツに関する権利の一元化を図ることが海外展開を行ううえで必須となります。
また、日本国内においては、企画段階で厳密なチェーン・オブ・タイトル (CoT) のクリアランスまでは行われていないケースが大半ですが、それが海外との共同製作において障害となったり、完成したコンテンツの流通先選定にあたっての制約となってしまったりすることも少なくありません。
こうした権利処理は全体設計の骨格となるところですので、十分な理解が必要です。
まずはコンテンツ製作に関する契約の全体像を把握し、適切なタイミングで契約交渉を行っていくことが必要となります。そのうえで、それぞれの契約内容が相互に矛盾を引き起こさないようにしておくことが重要です。
完成したコンテンツに関する権利の一元化を図るメリットは多々ありますが、特に、海外展開を行う際の交渉を、シンプルかつ迅速に進めることができるという点が大きいと考えます。そのためにも権利の一元化という考え方を理解しておくことが有益になります。
映像化を行う際には、資金調達を含めたその実現可能性を探る期間が必要です。原作を元にした映像製作において、そのための企画開発期間を設けるために必要な契約がオプション契約 (オプションアグリーメント) となります。ここでは、事例をベースにしてオプション契約の全体像を理解してください。
オプション契約の具体的な内容はどのようなものか、何を規定する必要があるのかを理解するために、日本国内における契約書サンプル、及び米国でよく使われる契約書サンプルとその解説を元にして、どのような条件設定にするのかを考えていきます。
一度映像化されたコンテンツを別の形で再度映像化するリメイク作品のオプションに関しては、権利関係がやや複雑になるため、確認しておかなくてはならない事項が増えてきます。各権利者との関係を整理するために、タームシート (主要な契約条件の一覧) 形式のサンプルを元に理解を深めてください。
オプション契約で設けた検討期間終了後に、実際に映像化を進めるとなった際に必要となるのが原作使用契約です。米国では原作の映画化権をプロデューサーに譲渡するという内容の契約が多く見られますが、ここでは日本において一般的な権利許諾型のサンプルを取り上げています。単に制作の許諾だけではなく、その後の二次利用についてもここで規定しておく必要があります。
脚本家によるオリジナル脚本を元に映画製作企画を立ち上げるなど、脚本家が原作者に近い立ち位置になるケースもありますが、ここでは、プロデューサーが主体となって立ち上げた企画において、当初から映画製作に用いることを前提として、脚本家に脚本制作を依頼するケースを想定したサンプルを取り上げています。
コンテンツ制作にかかわったスタッフやキャストについても著作権や人格権が発生するケースがあるため、原作者や脚本家との契約が完了したのちに行う、制作関連契約のうち主要なものについても合わせて理解し、適切な権利処理を行っておく必要があります。