日本で昨年発売され、たちまちベストセラーとなったホラー小説があるとしよう。
ホラー小説を出版したあなたの勤める出版社は、作家から二次利用の窓口を任されている。ここのところ、日本のテレビ局や映画会社からドラマ化の提案や、映画化の提案が殺到しているが、その小説の世界観に合った規模の提案になかなか出会えない。
そんなある日、担当者のあなたのところに1通のEメールが転送されてくる。ハリウッドのスタジオが、小説の映画化を検討したいという。利用規模も世界レベルで、提示額もそれなりに大きい。あなたの勤める出版社は、国内のテレビ局や映画会社とはひと通り交渉した経験があるものの、ハリウッドのスタジオを相手に交渉するのは初めてだ。さて、どうしたらよいか。
本稿では、このような場面で、ハリウッドのスタジオが最初に持ち出してくる契約、オプションアグリーメントについて、小説の映像化を例に、その内容の解説とともに、交渉当事者となるプロパティ(小説)の権利者として注意すべき点について扱う。