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オプションアグリーメント~小説の映像化の場合~松島恵美(骨董通り法律事務所 弁護士)

 日本で昨年発売され、たちまちベストセラーとなったホラー小説があるとしよう。

 ホラー小説を出版したあなたの勤める出版社は、作家から二次利用の窓口を任されている。ここのところ、日本のテレビ局や映画会社からドラマ化の提案や、映画化の提案が殺到しているが、その小説の世界観に合った規模の提案になかなか出会えない。

 そんなある日、担当者のあなたのところに1通のEメールが転送されてくる。ハリウッドのスタジオが、小説の映画化を検討したいという。利用規模も世界レベルで、提示額もそれなりに大きい。あなたの勤める出版社は、国内のテレビ局や映画会社とはひと通り交渉した経験があるものの、ハリウッドのスタジオを相手に交渉するのは初めてだ。さて、どうしたらよいか。

 本稿では、このような場面で、ハリウッドのスタジオが最初に持ち出してくる契約、オプションアグリーメントについて、小説の映像化を例に、その内容の解説とともに、交渉当事者となるプロパティ(小説)の権利者として注意すべき点について扱う。

目次

1. はじめに
2. オプションアグリーメントとは
3. オプションアグリーメントの各条項
 3-1. プロパティ
 3-2. Chain of Titles.
 3-3. オプション期間中のプロパティ利用
 3-4. オプション料・オプション期間
 3-5. 映像化権料
 3-6. オプション権行使によって獲得する映像化権の範囲・内容
  (1) 映像化権の地域、言語、期間
  (2) 映像化権の内容
  (3) 本映像の前篇・続篇・スピンアウト・リメイクなどの扱い
  (4) 付与の意味 ~譲渡 vs. 独占的ライセンス~
 3-7. プロパティ権者に留保される権利
 3-8. クリエイティブコントロールと著作者人格権の扱い
 3-9. クレジット
 3-10. 二次的著作物としての本映像の権利帰属
 3-11. プロパティ権者への追加支払い
  (1) 二次利用に応じた追加支払
  (2) 一定の収益に応じたボーナス的追加支払
  (3) 新たな種類の映像(続篇・リメイクなど)を制作する場合の追加支払
 3-12. 表明・保証
 3-13. Work Made for Hireと職務著作概念の違い
 3-14. 救済手段の制限
 3-15. プロパティの映像化と利用の塩漬けを防ぐために
 3-16. 準拠法・紛争解決手段
4. 最後に
5. 参考資料リスト

基本情報

ページ数
25ページ
出版社
経済産業省
言語
日本語
発行年
2011年