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現地化ツールとしての日本人俳優の必要性深田 祐輔(USC School of Cinematic Arts, Film and Television Production)

「日本コンテンツ」には米国社会の中に取り込みうる社会的文脈が希薄であり、また日本人制作者には「マイノリティ」という身分をどう扱っていくのかという訓練が十分にできていないことが多い。したがって、日本を舞台にした物語や日本人が登場人物として出てくる物語を米国においてピッチしようとする場合、その中に米国的な文脈をいかに入れていくのかということを問われ、困惑することになる。つまりそれは、コンテンツ(=物語) をバックグラウンドが違う人間に伝えるということが苦手であるということであり、これこそが海外で日本コンテンツが伸び悩む根幹の一つだと考えられる。『ラストサムライ』の主人公が米国人であることや、『47RONIN』のKeanu Reevesが日米ハーフという設定であることは「マイノリティ・コンテンツ」としての「日本もの」を現地化する試みの一例と言えるが、日本人として世界市場にコンテンツを供給しようとする際には、こういった「現地化」のノウハウとそれを可能にする技術や人材を蓄積する必要がある。アニメ業界ではその試みが既に進められているというが、声や色彩の変更により国籍変更が可能なアニメに対し、実写においてはより複雑となる。『SAYURI』で日本人芸者をGong LiとZhang Ziyiが演じ、『Ghost In the Shell』の草薙素子をScarlett Johanssonが演じることが日本コンテンツの現地化として最適な道なのかということは、この観点から再考されるべきだろう。 本稿では、日本コンテンツの現地化という観点から、その鍵となる日本人俳優の置かれた状況や、日本コンテンツ活性化のための日本人俳優の必要性について考えたい。そのために、まずハリウッドにおける「アジア」の最新の動向を概観し、そこから「日本」の可能性を探っていく。

目次

1. はじめに
2. 「アジアコンテンツ」の躍進
3. 「日本コンテンツ」の状況
4. 日本人俳優の現状
5. まとめ

基本情報

ページ数
7ページ
出版社
経済産業省
発行年
2015年