映画ビジネスは製作、配給、興行、二次利用といった流れで構成されており、映画製作のプロセスについて、基本的な部分では、世界各国共通である。その基本の部分はもっとも重要であり、また情報として体系化され、「プロデューサー・カリキュラム」(※注1)でも網羅的に説明されている。しかし、一方で、ひとつの国の中で、小規模で進められた映画製作においても、想定外の問題が起こることが多々ある。映画製作では、作られた本数の数だけ、ケースバイケースの事例があるといえる。さらに、映画製作が国際共同製作になると、物理的な製作システムが国によって異なり、脚本開発での感情表現が異なり、配給システム、宣伝費の規模、観客層の構成も異なる。そして劇場公開でも、公開規模、公開期間、配給と興行のロイヤリティの考え方が国によって異なり、二次利用に関しては、基本の部分での前提すら一致していない場合もある。そこで、プロデューサーは、基本的な情報を装備した上で、ケースバイケースの事態に対?できる反射神経が求められる。
ここでは、日本と極端に異なるアメリカの例をはじめ、日本、中国、韓国を中心とした、アジアでの共同製作の現場で、「プロデューサー・カリキュラム」の情報を?用するため、それぞれの国の映画ビジネスの実際を紹介したいと思う。
※注1 2003年度に経済産業省の委託事業として制作されたカリキュラム。コンテンツ産業の要となるプロデューサー人材の重要性に鑑み、国際的ビジネスプロデューサー養成のために必要とされる知識・ノウハウを体系化し、策定した。PDFデータとして、http://www.meti.go.jp/policy/media_contents/producer_curriculum.htmからダウンロード可能。