『おくりびと』(08)がアカデミー賞を受賞して以来、山形県酒田市を多くの観光客が訪れるようになった。北海道で「居酒屋はどこ?」と尋ねる中国人旅行者が増えている。そして、秋田県では韓国─秋田間の定期便の搭乗率が50%台から70~80%台に向上した。いずれも、映画やドラマが撮影された地域に関する近年の話題で、映画やドラマの誘致が地域の活性化、特に観光振興につながった例として紹介される話題である。
現在、日本には100を超えるフィルムコミッションや、その他のロケ支援組織が設立され、活動しているという。その活動目的の多くは、映画やドラマの誘致によって知名度向上を図り、ひいては観光振興を目指すとされているが、フィルムコミッションの目的はそれだけではない。世界各地で展開される映像製作支援には、フィルムコミッションが審査過程や技術的な支援などにも関わっている。また、設立から10年を経過した日本の各地域のフィルムコミッションも、単なるロケ地紹介ではなく、これまでに製作クルーを支援した経験を蓄積し、それぞれの地域で円滑に撮影が行わるための技術的な支援や、地域のさまざまな活動に映像を活用する観点からの協力活動を行っており、これからの国際共同製作において重要な役割を果たすと目されている。
本稿では、特に日本で撮影が行われる国際共同製作の作品を想定し、フィルムコミッションを製作側が活用する際の留意点等を示す。