2000年頃から、米国、特にカリフォルニア州で映画製作が自国から他国にシフトする「runaway production (映像製作空洞化) 」問題がクローズアップされていたが、ついに2014年に、同州が2015年7月から5年間の年間税金優遇額を330億ドルまで上げると発表した。近年深刻化した州内の映像製作空洞化に対する支援処置がようやく動き出し、海外や他州にプロジェクトをとられたLAの製作会社やローカルクルーに安堵感が広まったに違いない。しかしもうすでに数々の老舗製作会社やVFXスタジオが倒産や買収に追い込まれており、優秀なアーティストや彼らを抱えたスタジオは海外や他州に拠点を移している。そしてその結果、低賃金で優秀な人材取得が可能な他国で一部の制作工程を行う「グローバル・プロダクション」が増加している。
しかし残念なことに、日本では真逆の現状が続いている。日本を舞台にしたハリウッド映画『ラストサムライ』が、実際にはニュージーランドで主たる撮影が行われたように、他国がさまざまな優遇制度を導入し、ハリウッドの制作委託先としてのポジションを競い合う中で、日本が制作委託地としてハリウッドの目に留まっていないのが一目瞭然である。
スタジオ映画製作におけるグローバル・プロダクションは、既に新たな製作モデルとして確立されはじめている。本稿は、各国の優遇制度の状況や隣国である韓国と中国の現状と動向など、ハリウッドスタジオのグローバル・プロダクションにこれから日本が参入していくために参考となると思われる情報について取りまとめたものである。