欧米の映画製作において、製作経理は非常に重要なポジションである。予算組みの段階からプロジェクトに参加し、準備・撮影期間中は日々の出金・支払い状況を把握し、次なる状況を常にシミュレートして報告することで、予算オーバーのリスクを軽減する。また、予算管理の透明性を高めることで、企画に確実性を持たせ、資金調達を行いやすくすることもできる。要するに製作経理は、プロデューサーが現場を切り盛りする上で、もっとも重要な部分をシェアするパートナーだ。
現在のところ日本ではまだ製作経理の役割が確立されておらず、製作現場に浸透もしていない。しかしプロデューサーもしくは出資者がその存在の有用性を理解できれば、製作経理は非常に大きな戦力となりうる。では、なぜ本来の役割が機能しないのか。出資者(製作委員会などの団体を含む)の製作管理に対するアプローチと、日本映画の慣習的な製作体制そのものが壁となっているのではないだろうか。