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留学のための事前準備
フィルムスクールには各種出願条件が設けられている。留学への第一歩として、まずは資格を満たし、書類を用意せねばならない。ここでは出願にあたって必要な手配、のちの留学生活に役立つ事前準備についてまとめる。

目次

1. 提出作品・提出書類の準備

1-1. 最初の難関となる語学力テストTOEFL

5大プロデュース学科のすべてにおいて、TOEFL(Test of English as a Foreign Language)スコアの提出が求められる。UCLAはiBT87点以上、USC、AFI、Columbiaでは100点以上、NYUは明確な基準はないものの、同様にハイレベルなスコアを要求される。しかも、これらは出願するうえでの最低水準であり、より高いスコアをマークすることが望ましい。出願までに数回受験し、最も高いスコアを提出するケースとよいだろう。事実、多くの留学者が、TOEFL対策に多大な時間を割いている。TOEFLは、留学にあたっての第一関門といえる。
TOEFLテストではリーディング、リスニング、スピーキング、ライティングの4技能が測定され、試験時間は4時間以上に及ぶ。スコアは0~120点(4技能で各0~30点)で、成績証明は受験日から2年間有効である。テストは年間30~40回、主に土曜、日曜に全国各地で実施されている。受験には225ドル、テスト実施日直前の申し込みでは260ドルが必要となる。申し込みはWebサイトから手続き可能で、結果もオンラインで確認できる。テスト対策の教材はTOEFL公式サイト(P.112を参照)で無料配布されているほか、参考書、PCソフトなどが広く流通している。これらを活用し、スコアアップに役立てよう。

1-2. 3セクションからなる進学適性試験GRE

GRE(Graduate Record Examination)は、学術系大学院の入学に際して必要とされる進学適性試験である。TOEFLが留学生のための試験であるのに対し、GREはネイティブの学生も対象にしているため、難度は高い。5大プロデュース学科の中でUSCとNYUの2校は、GREスコアの提出を求めている。
テストはGeneral Test(一般知識)とSubject Test(専門知識)があるが、求められるのはGeneral Testのスコアだ。General TestはVerbal Reasoning(英語力)、Quantitative Reasoning(数学知識)、Analytical Writing(分析作文)の3つで構成されている。Verbal Reasoningでは、文章補完能力、文章置換能力、読解能力が問われ、Quantitative Reasoningは基礎数学、代数、幾何、データ分析の問題が出題される。Analytical Writingでは、論理的な分析力で文章を作成することが要求される。スコアの有効期限は5年である。
テストは祝日を除くほぼ毎日、東京、神奈川、大阪で実施されている。受験費用は185ドルで、Webサイト、電話、郵送、FAXで申し込みが可能。試験終了直後から暫定スコア(Analytical Writingを除く)を確認でき、後日正式なスコアが郵送される。教材はGRE公式サイトで無料配布されているので、参考にしてほしい。

1-3. 大学卒業時の成績証明書

アメリカの大学院では学業成績を事前審査するため、出願時に成績証明書の提出を義務づけている。一般的に成績証明書の学業成績を平均点で換算したGPA(Grade Point Average)が判断基準とされ、大学院課程ではGPA3.0以上であることが求められる。
日本では主に4段階で学業成績が評価されるが、アメリカでは5段階評価となっている。そのため、基準に基づいて評価を換算し、GPAを算出せねばならない。4段階評価の換算方法は、以下の通りである。もし出身校の成績評価法が大きく異なる場合は、出身校に依頼して成績証明書を別途作成する必要がある。

4段階評価の換算表

成績評価換算ポイント
A 80 - 100 4ポイント
B 70 - 79 3ポイント
C 60 - 69 2ポイント
不可 D 0 - 59 0ポイント

GPA算出法

GPA = (〔科目のポイント×単位数〕+〔科目のポイント×単位数〕+ ...... ))
総単位数

GPA換算例

科目成績評価科目ポイント×単位
英語 A 4ポイント×4単位=16
数学 A 4ポイント×4単位=16
化学 A 4ポイント×4単位=16
政治学 B 3ポイント×2単位=6
哲学 C 2ポイント×2単位=4
GPA = (16+16+16+6+4) = 3.625
16

1-4. 信頼できる人物からの推薦状

推薦状は、志願者のタスク遂行能力に関する専門家の証言である。学業上の能力、映画製作に関する技能、人格について同じ分野の先達がどのように評価しているか、その確認のために使用される。その内容が詳細であるほど入学審査にとって役に立つものとなり、ひいては志願者のためにもなる。
推薦状の作成にあたり、まず大切なのが推薦者の選択である。推薦者は志願者の能力、人格を詳しく知り、なおかつ映画産業を知悉した人物であることが望ましい。5大プロデュース学科では複数の推薦状提出を求めているが、同じ職業、同じ大学からの推薦状が複数あっても意味をなさない。志願者の人物像を多面的に浮かび上がらせるよう、さまざまな立場、職業の推薦者に書状を依頼することが重要だ。例えば、大学教授をはじめとする学術分野の推薦者、ビジネス分野の成功者、会社で共にプロジェクトを推進した上司など、多様性を持たせるとよいだろう。また、志望するプロデュース学科または同フィルムスクールの卒業生からの推薦状がもらえると、同校の教育やカルチャーに適した人物であるとの証明ができ、非常に心強い。フィルムスクールによって推薦状の規定数が定められているが、場合によってはその数を超える書状を送付することも検討したい。
推薦状は志願者が読むことはできず、多くの場合、推薦者から直接大学宛に送るようになっている。志願者が開封すると無効となるため、封をした後に推薦者がその上にサインをするなど細かいルールがある。入学後に推薦状を読みたい人は事前に大学に申告すれば読ませてもらえるが、その場合は権利を破棄することが一般的だ。さもなければ、推薦者が正直な感想を述べることができないからである。そのため志願者は、事前に「自分のどのような点を評価してほしいか」を推薦者に明確に告げておく必要がある。複数の推薦状で同じような文面にならないよう、具体的なポイントを挙げて依頼すべきだ。
以下の点を踏まえ、結果として、志願者の人物像が浮かび上がるような説得力のある推薦状を作成したい。

①知的レベル

志願者の知力、分析スキル、論理的能力をどう評価するか。志願者の創造性を裏づけるものはあるか。

②専門分野に関する知識と経験

映像分野に関する知識の深さ、製作経験、実績はどの程度あるか。

③コミュニケーション能力

語学力を含めたコミュニケーション能力について、説得力をもって口頭で意思を伝えられるか。TOEFLスコアに不安がある場合、推薦状で語学力をフォローするのもよい。

④意欲や情熱

志願者の粘り強さ、効率、モチベーションはどの程度のものか。人に頼らず作業ができるか。

⑤適応性

大学院での研究に求められる成熟度、個人としての適応力を持っているか。学生や仲間からの信頼を得ているか。

⑥プロデュース学科で発揮する能力

志願者はプロデュース学科でどの程度の成績を収めると思うか。映像分野への適性はあるか。他の候補者と比べて、この志願者はどの位置にランクづけされるか。

1-5. CVで自分をアピール

CV(Curriculum Vitae)は、自分のスキルや経験をアピールするために職歴、学歴、能力をすべて網羅した英文履歴書である。作成時に重要なのは「標準書式はひとつではない」という点だ。自分が志願する領域で最も重要とされるポイントを強調し、相手に強く訴えかけるCVを作らねばならない。例えばUSCのPeter Stark Producing Programでは、「学歴や職歴のほかに、あなたの関心やスキル、情熱がわかるような活動も記入してください。ほかにも旅行やアートの経験、参加したクリエイティブ・プロジェクトについてもまとめてください」と要求している。フォーマットに従うだけでなく、個性や情熱が伝わる文書を作成すべきだろう。
オーソドックスな構成としては、まず資格概要を冒頭に置き、得意分野、業界経験を記す。次いで、職務経歴で過去のキャリアを中心にこれまでの経験をまとめる。この際、現在あるいは最近の仕事を初めに記し、古いものへと遡っていくのが一般的だ。それぞれのポストで自分が担っていた責任や実績も記しておこう。続いて、所属、コンピュータスキル、学歴を書く。大抵の場合、3~4ページ以内に収まるだろう。

1-6. パーソナル・ステートメントで情熱を伝える

パーソナル・ステートメントは、自己紹介や志望動機について一人称で記した文書である。多くの場合、志願したフィルムスクールから何らかの課題や質問が提示され、それに応える形で文章を作成することになる。例えばUCLA のProducers Programからは「教員にあなたという人物を知ってもらうための1~2ページの文書を書いてください。このプログラムに入学することで何を実現しようと考えていますか? 職業上の目標は何ですか?その目標にどうやって到達しようと考えていますか?」という課題が出されたことがある。投げかけられた質問に対し、自分の個性を出しつつ相手の興味を引く回答をすることが重要だ。将来の目標、人生経験、刺激を受けた事柄などを語りつつ、批評能力や着眼点もアピールしたい。
また、プロデュース学科を志すのであれば、ストーリーテリングも意識すべきだろう。映画を作りたいという思いがいつ頃から形成され、どのようにモチベーションが膨らみ、そのためにどんな努力をしてきたのか。抽象論ではなく、映画的なストーリーを意識した展開が望ましい。MBAプログラムとは違うエンタテインメント分野だからこそ、紋切型ではない読みごたえのある文書がベターだろう。USCのPeter Stark Producing Programのように映画業界での経験よりも人生経験の豊かさを重視するプロデュース学科もあるので、"強い物語"を持っていることはアピールしておくべきだ。
文書の作成前には、以下の点を整理しておくとよいだろう。
  • 自身の人生において、特別な体験、印象深い出来事は何か
  • 映像分野に興味をもったきっかけ。映像への興味がさらに刺激された経緯。 自分がこの分野に適していると信念を強めた理由。これまでにどんな見識を得たか
  • 将来的なキャリア目標
  • どんなスキルを持っているか
  • 人生において、どんな困難や生涯を乗り越えてきたか
  • どんな性格であり、それが将来の成功にどう役立つか
また、文書作成時には以下のポイントを意識したい。

①聞かれた質問に答える

複数のフィルムスクールに願書を送る場合、パーソナル・ステートメントを使いまわしてはいけない。訊ねられた質問ひとつひとつに答えることが重要であり、わずかにでも異なる答えが求められているのであれば、別途回答を作成すべきである。

②ストーリーを語る

回答には具体性が求められる。映画プロデューサーになりたいと願うなら、その論理的な理由が必要であり、自らの体験に根差しているべきである。そのストーリーを、熱意と説得力をもって文章に書き起こしてほしい。

③自分だけの切り口を見つける

自分の人生に劇的な要素が欠けている場合、ストーリーで興味を引くことは大変難しい。他の人にはない切り口を見つけ、読む者の心をつかむよう心がけたい。

④導入部のパラグラフに集中する

読む者の関心を得られるか否かは、導入部で決まる。最初のパラグラフは、パーソナル・ステートメントの枠組みを作る重要な位置づけだと心得よう。

⑤志願するプロデュース学科についてよく調べる

志望動機を問われたら、より明確な答えを出すためにそのプロデュース学科について今一度深く調べよう。他校と比べてどんな点が優れているのか、自分にとって何が決め手となったのか、しっかり言及することが重要だ。

⑥正しく丁寧に書くこと

内容だけでなく、文章作成能力の高さ、言葉遣いの正しさも重視される。決められた文字数を守り、誤字のないように何度も推敲し、明確かつ簡潔な文章に整えたい。

⑦定形表現を避けること

志望動機ひとつ取っても、個性は豊かに表現できる。何度も繰り返されてきたありきたりな表現は避け、自分らしい回答を目指すべきである。
なお、作成した文書は第三者に読んでもらって意見を仰いだり、添削してもらうことを強く勧める。メンターや留学コンサルタントに依頼するほか、エッセイカウンセリングを受けるという方法もある。高額な費用が掛かるが、これも選択肢のひとつといえるだろう。

1-7. シノプシス、トリートメント、脚本の制作

出願の際に、シノプシスやトリートメント、脚本の提出を求めるフィルムスクールも存在する。例えば、UCLAは2本のトリートメント、NYUでは4分間のサイレント映画のシノプシス、ふたりの間の対話シーン、長編映画のコンセプト、Columbiaでは映画シナリオ、長編映画のトリートメント2本を提出する。なお、AFIは提出書類にこそ含まれていないが、原則として映画製作経験が求められる。これらを作成する能力が備わっていなければ、入学は困難だ。そもそもストーリーを作ることを楽しめなければプロデュース学科に通う意義は薄く、プロデューサーという職に就くことも難しいだろう。
提出作品を作成するにあたり、まず大切なのは魅力的なストーリーを作ることだ。いかに他人の共感を得るストーリーを作るか、その点を強く意識したい。ストーリー作りの経験がなければ、思いついたアイデア、ヒントになりそうなものを即座にメモすることから始めよう。
また、同様に大切なのが、それぞれのフォーマットを把握することである。シノプシスを要求されているにもかかわらず脚本を提出すれば、優れた内容でも高い評価を得ることはない。ルールとフォーマットを抑えることが肝要だ。詳しい書式については参考書などを参照してほしい。ここでは、各用語について解説を加えておく。
おおまかにいうと、シノプシス<プロット<トリートメント<脚本の順で内容が詳細になっていく。シノプシスは、ストーリーを簡潔にまとめたあらすじを指す。冒頭から結末まですべての出来事やシーンを詳細に書き記したのがプロットなら、その圧縮版がシノプシスだと考えればよいだろう。シノプシスの目的は物語の概要を伝えることであり、企画を売り込むことではない。コンパクトかつシンプルに内容をまとめることが求められる。
トリートメントは、プロットと脚本の中間に位置する詳細なあらすじを指す。脚本前に映画の構成を確認するために執筆され、主要なセリフや演出に関する記載も含み、長いものは数十ページになる。 トリートメントの目的は売り込むことであり、シノプシスにはない緊張感を伝えることが望ましい。読みやすく、ドラマティックかつ視覚に訴える文章を意識し、時制は現在形を用いるのが一般的だ。物語の鍵となる部分や主要人物、「幕」の数やアクションライン、設定、視点、最も劇的なシーンやターニングポイントといった要点を網羅する必要がある。
脚本は、俳優のセリフ、動作、舞台装置までを詳細に記した映画の設計図だ。「Microsoft Word」などの文書作成ソフトでも作れるが、書式に従って書く必要がある。「Final Draft」などの脚本作成ソフトを使えば、フォーマットに則って脚本を仕上げることができる。いずれにせよ、作成ルールに従い、読みやすくすることが重要だ。

1-8. スクールごとに異なる書類を用意

以上が一般的な提出書類だが、中にはさらなる書類が求められるフィルムスクールもある。それぞれのフォーマットに則り、スケジュールに余裕を持って書類を用意したい。なお、プロデュース学科によってそれぞれ特性も求める人材も異なる。そのため、複数のフィルムスクールに出願する際は、各校に合った書類を用意すべきである。
また、自分をアピールするため、規定以外の書類を送付してもかまわない。一旦提出したものを推敲して再提出してもよいとされている。「こうでなくてはならない」と形式ばって考えるより、自分のスキルや熱意を伝えるための最善策を実行すべきだ。

2. 面接をクリアするには

2-1. 情熱を伝えるピッチのスキルが必要

出願後、書類選考を通過するとフィルムスクールから面接の通知が来る。改めて志望動機、プロデュース学科で何を学びたいか、適応力はあるか、といったことを聞かれるので、事前に模擬練習を重ねておくとよいだろう。
面接で重要なのは、自分を売り込む力である。これには、ハリウッドにおけるプロデューサーの役割にも大きく関わっている。ハリウッド映画のプロデューサーは、アイデアやストーリーを磨き、スタジオなどの出資者に売り込む力が最も重要とされる。これが、いわゆる「ピッチ」である。出資者を説得し、将来的に企画や脚本を売り込むピッチのスキルが備わっているか、フィルムスクールの面接で早くも試されるというわけだ。
そのため、面接では質問に対して、ただ淡々と答えるだけでは不十分である。自分に何ができ、なぜその大学に入りたいのか、熱いパッションをアピールしなければならない。もちろん、そのための語学力も必要となる。

3.充実した留学生活を送るために

3-1. 英語力の必要性

TOEFLスコアの要求水準からもわかる通り、英語力は留学にとって必要不可欠なスキルである。そもそもプロデューサーという仕事には、口頭でのプレゼンテーション、コミュニケーションが欠かせない。5大プロデュース学科の中には、入学後早い段階で映画の企画を提案し、チーム製作に取り組むところもある。となれば、相手の話を理解し、細かい機微まで受け止めるリスニング能力、企画内容や自身の情熱を伝え、相手を説得できるほどのスピーキング能力を、留学前から身につけておかねばならない。映画、映像に関するテクニカルタームを使いこなせなくても特に問題はないが、ある程度理解できたほうがよいだろう。
フィルムスクール留学者の中には、家庭教師をつけるなど専門的なトレーニングを積んで語学力の向上に励んだ者もいる。また、たとえ短期間であっても実際に英語圏で生活し、語学力を伸ばすという方法もひとつの手だ。単にテストのスコアを上げるだけでなく、自由闊達なコミュニケーションを図れるよう、生きた英語を身につけることが望ましい。

3-2. 頼れる師、メンターを作る

2章の「フィルムスクールへ行くには」の冒頭で述べた通り、師事を受けるメンターを持つことも大切だ。提出書類の添削、推薦状の作成などを依頼できるといった利点もあるが、メンターとの対話で刺激を受け、人間的な成長も図れる。目指すべきロールモデルを掲げることで、その後のキャリア形成にも好影響を与えるはずである。
では、メンターを作るにはどうすればよいのか。興味を持った人には、臆せずコンタクトを取ることが重要だ。今の世の中、イン ターネット経由でメッセージを送ることはそう難しくない。「連絡しても無視されるだろう」と最初から諦めず、積極的に熱意を伝えることを勧めたい。
また、師事するメンターが見つかったら、関係を保つ努力も惜しんではならない。頻繁に報告、連絡、相談するように心掛ければ、メンターも折に触れてこちらのことを思い出してくれるだろう。そこからさらに人脈が広がったり、思わぬ情報が手に入ったりすることも考えられる。
5大プロデュース学科の中には、業界のプロフェッショナルをメンターとしてアサインし、学生を指導するケースもある。留学前にメンターを持つことは、その事前準備としても有用だ。

3-3. 映画に関する知識を深める

留学前に今一度、映像コンテンツへの知識を深めておくことも推奨したい。『Variety』『Deadline Hollywood』『The Hollywood Reporter』をはじめとするハリウッド業界誌、映画データベースサイト『IMDb』などを情報源とし、次の①から③のようなポイントに注目しながら最新のハリウッド動向をチェックしておこう。なお、推薦文献についてはP.106以降にも掲載しているので、そちらも参照してほしい。

①押さえておくべき人物

  • 映画監督
  • 主要な俳優
  • 脚本家
  • プロデューサー
  • スタジオエグゼクティブ
  • エージェント

プロデューサーにとって、同業のプロデューサーとクリエイティブに貢献する人物を把握することは最も大切である。今、勢いのある俳優は誰か。新たな才能は誰か。過去にどのような作品に関わったか。このような情報を、常に更新する必要がある。

②押さえておくべき映画作品

  • 6大メジャー映画スタジオ(Warner Bros. Pictures / 20th Century Fox / Walt Disney Pictures / Sony Pictures / Paramount Pictures / Universal Pictures)に関して、その年および翌年に公開予定の作品
  • サンダンス映画祭、SXSWといった主要なインディペンデント系映画の映画祭で話題になっている作品
  • AFIが選出した「AFI's 100 Years...100 Movies」に掲載されている作品
  • アカデミー賞受賞作品(特に作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞)
  • その他、超低予算でありながら莫大な興行収入を生みだした、巨額の製作費を投じながら興行的に大失敗した
など、話題を呼んだ作品
映画作品についてはストーリーのみでなく、主要な俳優、監督、主要スタッフ、プロット、類似している映画まで押さえられるとよい。ただ闇雲に映画を見るのではなく、監督、俳優、ジャンル、時代といった切り口を自分で設定して映画を見ていくと、より体系的に頭に入りやすいだろう。

押さえておくべき制作会社

  • 『Variety』の「Facts on Pacts(6大メジャー映画スタジオと契約している会社のリスト)」に掲載されている制作会社

ハリウッドのスタジオとFirst Look DealやOverall Dealを結んでいる制作会社を把握しておくことも重要である。会社の代表、手掛ける作品の傾向まで、押さえておきたい。フィルムスクールに入学後、インターンシップとしてこれらの制作会社で働くことになるかもしれない。
また、近年では映画だけでなく、アメリカのテレビ番組も注目を集めている。日本では見ることができない番組も多いが、話題作は留学前にチェックしておくと授業にもついていきやすい。
ハリウッドの動向以外に、日本映画および映画産業について深く知ることも必要だ。ビジネス的に見れば、日本の市場は極めて大きい。日本の映画産業を改めて見つめなおし、現状について見解を語れるようになっておきたい。もちろん、日本の文化や社会情勢について一定の見解を持つことも重要だろう。